『名付けようのない踊り』
〝Min Tanaka〟のこと

映画

『名付けようのない踊り』
ダンサーの田中泯さんを追ったドキュメンタリー映画。

 犬童一心監督作品で、「田中泯の生涯を追ったドキュメンタリー」と聞くと映画館で観ないわけにはいきません。
 〝田中泯〟を知ったのは、山田洋次監督作品『たそがれ清兵衛』でした。

 初めて観た時の印象としては、主人公の敵という役回りもあってか、独特のオーラを纏い、ただならぬ雰囲気(妖気のような)を漂わせた役者さん、という感じ。

 ひと目で只者ではないことははわかりますから、
 「一体誰なんだ?」

と思いながら観ていたわけですが、その死に様を観ておぼろげにわかりました。
 死んでいく姿が〝舞〟そのものだったのです。

 「なるほど前衛系のダンサーだな」

 と、その時は直感的に思い、それから映画、テレビでしょっちゅう観るようになりましたが、その姿を追っていると、「前衛的なダンサー」とした直感も、「もしかすると違うのではないか」と思い始めていて、今回の映画で、やはり間違っていたことに気付かされました。

 勿論、括ろうと思えば〝前衛〟で括れるのかもしれませんが、そんなに単純ではない、という意味です。

 以下は今回の作品に出てくるため詳細は避けますが、土方巽の影響を受けた、というのは想像できるとして、詩人で童話作家の吉田一穂が好きだとか、また文芸評論家で哲学者のロジェ・カイヨワを崇拝していて、パリの自宅に押し掛けて、実際に踊りを見てもらった、なんて話を聞かされると、「なんで知らずにいたんだろ?」と、なんだか落ち込んでしまいます。
 とにかく、とんでもない人ですわ。

 映画のタイトルである〝名付けようのない踊り〟は、それこそ踊りを見た後の感想としてカイヨワに言われた言葉の一節のようでして、ですから、彼の踊りを敢えて名付けるとすれば、
 〝Min Tanaka〟
であると。

 私が勝手にそう命名した次第です(もしかすると、これも改題することになるかもしれませんが)。

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 観終わって、久しぶりに購入した公式パンフレット。
 いいモノを観せていただきました。

 「幸せだ」

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