〝多度祭〟の上げ馬神事

時事関連

伝統的な馬の奇祭か?

 前回の記事では、新潟の鳥坂神社で行われる『シャングシャング馬』を紹介しました。そのお祭りでも触れた馬の神事〝駆け上がり〟ですが、三重県桑名市の多度大社で行われている『多度祭』は〝駆け上がり〟がもっとも知られているお祭りかもしれません。
 実は多度祭の〝上げ馬神事〟を題材にしたドキュメンタリー映画の試写会に行ってまいりました。

『おれらの多度祭ー小山地区・三年間の記録ー』

 監督の伊藤有紀さんは三重県出身。
 同じく三重出身で、上方落語の重鎮である桂福団治(当代)のドキュメンタリー作品(『人情噺の福団治』)を2017年に制作されたのですが、東京・日本橋の三重テラスで行われた上映会にお邪魔して、その際のご縁で今回も案内状をいただいた次第です。

 このお祭り、一説によれば南北朝時代から、と言われるくらいの長く続いてきた〝歴史〟がありますし、いま現在の地元との密着度も相当なものがあります。その一方で、馬を扱う神事の在り方に関すること……要するに動物愛護の観点からの批判、がニュースで報じられて賛否両論あることも知ってましたので、一度ライブで見てみたい、とは思っていました。
 〝奇祭〟と呼ばれることのあるこのお祭り。例年5月4、5日に行われていて、ここ2年は新型コロナウイルスの関係で中止に。今年もすでに中止が決まっていて、なかなか現地で観ることが叶わずにおりますが、それがドキュメンタリー映画として紹介されるのなら行かない手はないです。
 伊藤監督がこの作品を撮る動機となったのは、自身が三重県出身というだけでなく、まさに多度が地元なのだそうで、幼少期から祭りの熱気を肌で知っていた、ということが大きかったようです。

 映像を観ますと、実際、駆け上がりは迫力満点です。細い路地の急坂を駆け上がり、のぼり切る直前に設けられた土塀を超えて境内の敷地に入っていく、というもので、会場のどこに居れば見やすいかの想像はつきませんが、関係者の興奮度は勿論、見物のお客さんの熱気も相当なもの。
 他方、馬愛好者の視点に立つなら、なるほど痛々しい感じはありますし、何度か視察に来ているという動物愛護関連団体の意見というのも、理解できなくはありません。

元気な伝統の継承者たち

 ただ、駆け上がりに関わっている地元の〝やんちゃ〟っぽい若い衆から「伝統を守ろう」とする熱意や強い意志は感じられますし、その若い〝伝統の継承者〟たちを暖かく見守る年長者の皆さんの温かいまなざしや思い、といったものが感じられ、地域社会に根付いた〝祭り〟そのものの意義、が、確かに伝わってくる……。

 だからこそ、なのですが、やはり改めて、「自分の目で見て、関係者の方に詳しく話を聞いてみたい」という思いに駆られました。文化として存続させるために、改善すべき点があれば改善する。ヒステリックな思考で拙速に判断するのではなく、検証を重ねることが重要なのではないかと……。

 いかに半分地元みたいな三重とはいえ、桑名は馴染みがなく、〝聞き込み〟が簡単にはいかないことは重々承知しているのですが、栗東トレセンの関係者の中にも積極的に関わっている方もいらっしゃるようですし、焦らずに、ボチボチとアプローチしてみようかな、と考えているところです。

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